コラム・チェックポイント

2024.06.28 上田 晃一朗

「ステマ規制」

1 はじめに
SNSの投稿やレビューサイトの口コミは、一見すると事業者の表示ではない、消費者やインフルエンサーなどの第三者の表示に見えます。しかし、これらの表示の中には、実は商品・サービスを製造、販売している事業者が投稿している広告もあります。このように、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すことをいわゆる「ステルスマーケティング」といいます。
令和5年10月1日より、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)が改正され、ステルスマーケティングにつき、新たな規制(5条3号)が設けられることとなりました。なお、消費者庁から「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~」が出ており、非常にわかりやすい内容となっています。

2 ステマ規制の必要性
消費者は、商品の広告などの表示を見て、商品を選んでいます。広告などは、消費者が商品を選ぶ判断材料となっているため、消費者が誤認しないように、正しく分かりやすい表示にする必要があります。また、消費者が商品を選ぶ際は、それが事業者の広告であるか?、第三者の感想であるか?が明瞭になっていることが重要です。事業者による広告であれば、消費者は、広告にはある程度の誇張、誇大が含まれているものと思っており、そのことを考慮して商品を選んでいます。一方、それが事業者による広告であることが分からないと、消費者は、第三者の感想であると誤認してしまい、その表示の内容をそのまま受けとってしまう可能性があります。これにより、消費者が自主的に正しく商品・サービスを選ぶことが出来なくなります。
このように、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すことについて、消費者を誤認させるおそれのある表示を規制することにより、消費者が自主的に正しく商品・サービスを選ぶことができる環境を守る必要があります。

3 ステマ規制の内容
景表法上、禁止されるステルスマーケティングとは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」とされます。
⑴ 事業者の表示であること
事業者の表示とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの品質、規格、その他の内容や価格等の取引条件について行う表示のことであり、一般消費者に対して、商品・サービスを知らせる表示全般のことを指します。事業者の表示と判断されるのは、事業者がその表示内容の決定に関与したと認められる場合です。つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合です。逆にいえば、事業者の表示ではないと認められる場合、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は告示の規制対象外です。

⑵ 一般消費者が事業者の表示であることを分からないこと
一般消費者が表示を見て、事業者の表示であることが明瞭となっているか否かを、表示内容全体から判断します。表示内容全体から判断するとは、表示上の特定の文章、図表、写真などから一般消費者が受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となるという意味です。
広告・宣伝である場合、広告・宣伝であることが一般消費者に明瞭に分かるような表示を行う必要があります。なお、広告・宣伝であることが社会通念上明らかに分かるものについては、ステマ規制の対象外です。

4 最後に
ステマ規制は、インフルエンサーや芸能人によるSNSでの投稿に限らず、アフィリエイトサイトにおける表示やショッピングサイトでの口コミなども規制対象となっており、非常に広範なものとなっています。自社の広告などが、ステマ規制に違反していないか改めて御確認ください。